October 30, 2011

波多野裕文「一日の孤独」
@ 晴れたら空に豆まいて

 波多野氏は豚に乗って登場、場内に豚を放ち、巧みに火を操る斬新なステージング。
 ギター一本と己の声で、プリンセステンコーも震え上がる異空間を創り上げたのでした。すげえええ!

 なんてね。

 とても和やかで、温かく満たされた空間と時間だった。ずっと記憶に残しておきたいので、覚えていることをできる限り書きつける。
 前日の公式ブログで「小音かつかなり渋い世界」と書かれていて、カバー多めかと思っていたが、未発表曲が沢山披露されて新しい手探りの世界だった。
 以下時系列で。歌詞、違っていたり混ざっていたりするかも。ご指摘歓迎します。

■登場
 楽しそう。挨拶の端々に笑みが混じって、客もつられて笑う。「何しよっかな」って既にゆるうい空気。
「Steve Jobsに黙祷しようか、30分間(笑)。やりたい人は後で一緒にやりましょう」

01. タナトス3号(仮)
《飛び魚跳ねるビルの街》《とんてんたんとんてんたんとん 大工は全部知っている》
「タナトス3号っていう仮タイトルで。あまりに酷いから、明日変えます(笑)」
◇未発表曲。『Lovely Taboos』に近い、中世ヨーロッパのような空気。「一度だけ」みたいなやわらかい手触り。《とんてんたんとんてんたんとん》が繰り返され、耳に残る。しっかり出来上がっていたので新アルバムの曲来た!と思いきや、仮タイトルというので違ったらしい。

02. かえるの王女さま
「何でだか『かえるの王女さま』ってすごく言いたい時期があって。かえるの王女さま。何でだか、解らないんだけど(笑)。で、アルバムのタイトルになってるんですけど。あんまり歌詞に多過ぎて、一部変えましたもん。そんな時に作った曲です」
《かえるの王女さま 君の心臓は楽器みたいだね》
◇未発表曲。これ? 王女を慕う臣下からのラブソングみたいだった。甘い。

03. やまいとオレンジ(長谷川健一カバー)
「何がいいってね、とにかくいい。何もかもいい。(きっぱり)」
「長谷川さんとは変な縁があって。僕の働いてた職場の同僚が、長谷川さんの親友っていう。そこから交流が始まったんですね。その共通の知人が面白い人で。部屋に、Sonic Youthのポスターが貼ってあるんですね。でも『俺はSonic Youthは聴いたことがない』と(笑)。ただ『格好いいから』って。ああ、全然ありだなあと思って」
「長谷川健一さんの沢山ある好きな曲の中でも『やまいとオレンジ』は自分にとって特別な曲で。聴いた時、本当に自分が書いたんじゃないかと思うくらいで。それを長谷川さんに言ったら……『何でなん』って」(会場爆笑)
◇裏声がずっと続くサビが新鮮。ギターと波多野さんの声で奏でられると、当たり前だけど印象が違った。原曲は重たくて冬の鈍い匂いがするけれど、波多野バージョンは浮遊感が心地良くて夢の中のよう。どちらも、とても良い。

04. 「すごい昔に作った曲」タイトル不詳
《穢れた体を拭い去るには 血を全て抜かねばならぬ》《この世界は美しい そして愚かで》《煙の街を旅しよう》《いつかは許されると思っていた 僕も 君も》
◇未発表曲。確かに詞が若い。でも世界観は変わらずで心地良かった。

05. コンコルド
《暗い闇の中から》《国際電話通じない》
◇未発表曲。「子供たち」の冒頭を思わせる、空がさっと引き裂かれるイメージ。この辺りで、未発表曲がどれほどあるのかと問い詰めたくなる。ブラックホールを覗いている気分。期待と畏怖と。

06. Little Sister(Rufus Wainwrightカバー)
◇あの声でなぞられる"And remember that your brother is a boy"がツボった。ルーファスといい長谷川さんといい、渋い男性ボーカリストが好みなのだろうか。

07. 笛吹き男
「僕、People In The Boxっていうバンドをやってるんですけど、(会場笑)……知ってるよね(笑)。それで、新しいシングルを出しました。『Lovely Taboos』っていう……知ってるよねえ?(笑) そうだよね」
「『Lovely Taboos』結構売れてます。あまり大きな声じゃ言えないんですけど。(客拍手)……大きな声じゃ言えないってことは、解ってるな? ツイートするなってことだ(会場爆笑)」
「何でああいう売り方なのかって、みんな疑問に思うと思うんですけど。USTで聞いてみてください」
「(終わった後)僕、笛吹き男、結構好きですよ。今まで書いた曲の中でも。自分で言うなってね(笑)。でも、ああいう曲はもう書かないと思います」
◇アコースティックだと一層切ない苦しい優しい。沁みた。自分もピープルの中でかなり好き。ツイートするなと言われたのでブログに書いてやる!けれど、大きな声で言えばいいのに。本当に本当におめでとう。もっともっと多くの人に聴かれるといい。愛されるといいよ。最後の「ああいう曲はもう書かない」がとても気になる。

08. 新市街
◇間奏のギターソロをtutulutululu tululululu...ハミングして、半分位で「つかれた……」会場爆笑。続きも頑張ってた。「ぱぁん!」(風船が空中高くで割れるようなふわっとした感じ)の後もハミングが始まり再び笑い。その後も《踊ろう朝まで》が何度も繰り返されて長く続いた。楽しい。

09. "One day I'll swallow your soul" (タイトル不詳)
「あ、そうだ。さっき作ったばかりの曲やろうかな」
◇未発表曲。歌詞は英語のワンセンテンスのみ繰り返し。フレーズも同じものが何度も繰り返され、最後の方で数回転調。飲み込まれる飲み込まれる。渦に吸い込まれていくような。弾き語りならではの感じだったけど、だからこそピープルで聴いてみたい。

10. 風が笑う
《新聞紙》《絵の具に溶けてしまいたいな》《死にとらわれるまで 死にとらわれるまでは》
◇未発表曲。いつの曲か言ってなかったけど、詞の質感は初期寄りだと感じた。「死にとらわれるまで」が何度も繰り返されていた。ふっと消えてしまいそうな、孤独な。

■リクエストタイム
 ワンフレーズだけのもの多し。沢山やったので解ったものだけ。
 リクエスト却下する理由にいちいち笑った:「知っている人は、歌詞を間違えると失礼だから……。歌詞問題がね」「それ、弾き語りできる?!」

・誰かの願いが叶う頃 - 宇多田ヒカル
 《あの子が泣いてるよ》 声がきれいだなあと改めて。
・きらきら星
 「きらきら星? 何それ? (客「ええー」) あっ、ああ、きらきらひかる~か」
 チューニングしまくって壊れたレコードみたくなっていた。斬新なきらきら星。「き、きー、き、き、きー、きー、きーらーきーら、きーらーきーらー、きーら、きーらーきーらーひーか、ひーかー、ひーかーるーおそらのほしよー……何だっけ。この後解んなくない?」終了。自分も解らなかったので調べたら、意外な出自で驚いた。
・Misstopia - THE NOVEMBERS
 「ノベンバはねー……あの4人じゃないとできないと思うよ」
 と言いつつ頭から少し。サビ《ああ君の小さな手》が飛んで、ふんふふふん♪ハミングになって終了。終演後小林さん来ているの気付いた。聴いていただろうか。
・Hyperballad - Bjork
 !!! リクエストした人に角砂糖を献上せよ!
 「久しぶりに新譜というものを買って(Biophilia)すごく良かった。全部ツボだった」
・The Stone - 小谷美紗子
 ワンフレーズだったけど「ギリシアの神殿」の一言が聴けて嬉しい。

11. 一度だけ
「一度だけって、いかにもやりそうじゃない?」
◇リクエストタイムからの派生。そう言いながら、フルでとても丁寧に歌ってくれた。

12. 土曜日 / 待合室
客「金曜日!」
「金曜日はねー、あのごきげんな2人がいないとね」
客「犬猫!」「6月!」「ブリキの夜明け!」「ヨーロッパ!」「月曜日 / 無菌室!」
「じゃあ、土曜日やろっか(笑)。何で訊いたんだってね、ふふ」
◇土曜日大歓迎。ちょうど雨の日。バンドとはまた違うところでぞわぞわした。

13. JFK空港
「JFK空港という曲があって。歌うのが大変なんです。……あの、歌うことって、すごく大変なんですね、僕にとって。自分が何者かっていうのがよく解っていないんですよ。自覚的じゃない。……何が大変かって言うと……(長い沈黙)あの、うまく言えないことは言うもんじゃないね! 区役所の何とかセミナーに言ってくる。『自分の気持ちをうまく伝える』、縮める術を学んできます(笑)。JFK空港という曲も、すごく大変で。何が大変かって、喋り出すと一時間くらいかかるな。でも僕、一生歌うって決めたんです。……決めたから(会場拍手)や、そんな、もったいない」
◇MCずしんと来た。「一生歌うって決めたんです」の覚悟。圧倒的な未来。それはきっと「生き続ける」ってことと同義。置き去りにされたような気持ちもある。
◇アレンジにやられた。朗読パートから、伴奏のギターがインプロビゼーション。不穏で狂っていてめちゃくちゃなフレーズ。それに淡々と早口の歌詞が乗る。この時点で鳥肌。そして、不意にギターが止まり《でもどうか諦めないで だって僕たちはまだこの世界に産まれてはいない》! 再びやさしいギターに戻り《荒れ放題の庭で~》。ギターに乗せてスキャットが長く続いて、あの賛美歌的フレーズで終わり。やられた……。

■アンコール
「恐縮です(笑)。そうだよね、有り得るよね。何も考えてなかった。どうしようかな」
 リクエスト募るも、「歌詞問題」ゆえに長く続かず。
「(客「ユリイカ!」)じゃあユリイカやろう。ユリイカ、でも歌詞がね……出てくるまで時間がかかる」
 危惧していた通り「明け方の僕らと~」以降が飛んでハミングになり、「これはひどすぎるな!(笑)」と終了。
「自分の曲でよくあるんですけど、歌ってると、作ってた時の第二候補、第三候補が浮かんできて、こう(片手ずつ詞を浮かべる振り→近付けて衝突)、事故」(会場爆笑)
「じゃあ月曜日やる! 何か妥協案みたいだな、じゃあ月曜日(笑)。何かリクエストありますか。や、待って、締めくらいちゃんと自分で考える。窮地に立たされているな」
 ぐだぐだいいよいいよ。

EN. 犬猫芝居
◇うまいこと締めた。公演名「一日の孤独」だからね。


 書き過ぎた気がするし、書き忘れた気もするので、後で推敲します。取り急ぎ。

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Maira Gall