June 30, 2015

AN INCIDENT AT A STREET CORNER Vol,26 @ カフェアリエ

 本日の会場は、外壁一面に蔦の這う古民家風の一軒家カフェ。入った1階の左手がキッチン、その上が演者控え室。右手は1階から2階まで吹き抜けになっていて本日はキャパ30人のライブスペースと化している。歌舞伎町と新大久保の狭間でひと息つけるこの空間、磯崎新設計だという。色々と昨今のお洒落カフェとは一線を画している。
 そんな場所で聴いてきた。コーヒー片手にのんびり、かと思いきや小キャパとノーマイクの緊張感も薄ら漂っていた。

■かとうみほ
 オープニングアクトとして演奏。他2人の間に立って連絡役をされた方だそう。
 ウクレレをぽろぽろと爪弾きながら歌う。ハワイアンとかリゾート風ではなく、深夜に隣のひとり暮らしの女の子の部屋から聴こえてくるような、ゆったりと密やかな演奏。盗み聞きみたいですみません、と言いたくなるくらいプライベートだった。やわらかい拍手に包まれて終演。

■山崎怠雅
 長髪に柘榴色のハットを被ったギタリスト、といえば1月に灰野さんの傍らで弾いていたその人だった。ソロの弾き語り、とても良かった。豊かなフレーズに満ちたギターは安心して聴いていられるし、声も詞も好きだった。迷いなく通るクリアな声が、解釈の余地を残した屈折気味の詞を真っ直ぐに導いていく。重力が四方八方に向いている道を歩いているのに、どう進めば良いかは明瞭に示されているような、不思議な感覚。この人にしかできない表現だった。そう思えるのは稀なことで嬉しい。黒髪ストレートの男性ミュージシャン一般への信頼度が更に高まった。

■波多野裕文
 柔らかい雨の日、サイドの髪の毛先が三日月みたいな弧を描いていた。
 この日の会場に馴染むバクダッドカフェの挿入歌に始まり、最近お馴染みのオリジナル曲達に加えてカバー数曲が光る全13曲。七尾さんやPeter Gabrielは原曲知らなかったけれど、とても良かった。前者は曲そのものが素晴らしく、後者は波多野さんの「この曲大好き」感が溢れ返っていて(曲からは反逆の色を強く感じたけれど)楽しかった。繊細な色で何重にも何重にも塗り重ねられたような七尾さんの景色から、マティスみたいな原色で世界を塗り潰される移り変わりも気まぐれなソロの面白さのひとつ。
 ソロオリジナルやピープルのセルフカバーは聴き慣れているものも多かったけれど、いつもと違った響きに耳を澄ませていた。吹き抜けの天井に、この日の夜に、雨に、飾りのない音が溶けていく。ギターを持ち上げるようにして弾いていて、なぜなのかと思っていたら、Tumblrで謎が解けた。《夜をかきわけて》で始まる昔作ったという曲、久しぶりに聴けて嬉しかった。Bird Hotel以前の匂いが確かにして、それが今目の前で息をしていることが、なぜだか堪らなく嬉しい。二度聴いただけなのに古い友人に会ったような気持ちになる。また会えるといい。
 アンコールは、ソロでは久しぶりの《新市街》。百人町によく似合う。いつか笑いながら諦めていたTu tulu tululu...のハミング、がんばって歌いきっていた。和やかに見守って終演。

 外に出ても夜の雨に先程までの音が溶けているような気がして、濡れてもいやな気はしなかった。重たい頭の奥で演奏を反芻しながら、音に包まれたまま家に着いて、余計な思考に邪魔をされないようにそのまま眠った。



01. Calling You (Jevetta Steeleカバー)
02. 《追放された王様》
03. ダンス、ダンス、ダンス
04. 気球
05. 旅行へ
06. Open (Rhyeカバー)
07. 線路沿い花吹雪(七尾旅人カバー)
08. Shock The Monkey (Peter Gabrielカバー)
09. 《夜はやさしい》
10. 風が吹いたら
11. 《夜をかきわけて》
12. ニムロッド

EN. 新市街

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Maira Gall